日々現状維持

日暮れて道はなし

プロフィール

七橋綴(ななつ☆)

Author:七橋綴(ななつ☆)
大学生:♂
2013年―――気づけば今年誕生日を迎えると四捨五入で30歳
地獄の業界、SE業。
NEETになりたい(迫真)

カウンター

宣伝/広告


ブログ内検索

presentsed by nanatu

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -


日は暮れて道はなし

本当にしょうもないことに、
僕は帰りの電車賃が足りず線路沿いをひたすら歩いていた。
文字通り、路銀が底を尽きたのである。
線路の上を歩いたのなら、それこそスタンドバイミー。
でも僕には探すべき死体も、頼もしい仲間もいない。
そういえば彼らは死体を見つけられたのだろうか。
子供のころに見た映画なので、僕の記憶は擦り切れたテープのように、
その先にひどくノイズが走っていた。

残っていたはずの財布の中の千円札はなかった。
記憶にはないがどうやら使ってしまっていたらしい。
コンビニで昼食を買ったときは小銭だけで払ってしまったので、
僕は唯一の財布の確認のチャンスを逸してしまったというわけだ。
残り150円となれば、もう電車に乗ることもできなかった。
ため息をつきながら、僕は横を通り過ぎていったバスを恨めしく思った。

目の前のバスが人間を吐き出しているのを僕はじっと見ていた。
そのうち、降口から一人の女の子がつんのめりながらバスを降りた。

「ぴろぴろぴりーん」

どうやら、頭もいかれていらっしゃるらしい。
これが僕と同じ制服を袖に通しているというのだから恥ずかしい。
できるだけ目を合わせないように僕はバス停から早足で歩いていった。

「おおっ、無視ですかいっ」

思わず振り返ってしまったのが、失敗だったことに気づく。
彼女に振り向いた瞬間、彼女の顔がにやりと笑ったからだ。
彼女はとててーとこちらへ駆けてくる。

「ねねっ」
「”ねね”なら多分古本がいっぱい売ってる所にいますよ」
「そこは神保町だし、名前は”ねねね”だしっ!」

どうやら突っ込みはできるクチらしい。

「えーと、じゃあハートマークの髪飾りをつけた」
「それは、コードネーム”C”ッ!」

おお、と素直に僕は関心してしまった。

「じゃあ、うさぎの」
「それはクレヨンしんちゃんのねねっ! って、”じゃあ”って何!?」
「いや、博識だなぁと思って」

「じゃなくて、ねぇねぇ。和君は○○○駅だよねっ?」

駅名が伏せてあるのはきっと大人の事情なんだろう。
ちなみに和君というのは僕の名前。
性格には和希なので、だいたいあってる。

「大人って卑怯だよねー」
「読んではいけない文を拾い上げないでください」

なんのことだかと、彼女は口笛を吹く。
そういえば、女の子は口笛を吹ける人少ないんだっけ?

「で、どぎゃんすか?」
「なんで方言になったのかわからないけど、○○○駅であってますよ」
「やっぱそーだよね。癌保険は死んでからじゃなくて、癌にかかった時点でお金もらえるもん」
「癌とまったく関係ねぇよ!」

線路にそって家が建っていたので、迂回することにした。
近所なのだろうか、彼女も歩調をあわせてついてくる。

「で、そういうあなたは、誰でございましょう?」
「おぉっ、まさか私を知らないなってっ、フケツっ!」
「なんでお前を知らないだけで不潔になるのか200字程度で説明してほしい」

いや、本当にしそうだったので、僕は焦って止めたのだが。

「クラス一緒でショー?」
「そんな、どっちの料理でショーみたいなノリいらないから」
「うまいっ! 和くん、厳選素材は海苔で決定だねっ!」
「うまくねぇよ!」
「海苔がおいしくないなら、厳選素材じゃないね」
「そっちの”うまい”じゃないよ!」

「私の名前は麻奈って言うんだけど、本当に覚えないのかなぁ?」

少し悲しそうな顔をされたのだが、まったく覚えがない。
そもそもクラスの女子の名前を把握してる男子は少ないのではないだろうか。
せめて苗字で名乗ってもらわなければピンとこない。

「苗字? 苗字も麻奈って言うんだよ。だから気軽に麻奈って呼んでね!」
「名前をつけた親の顔を見たいよ!」

というか100%嘘だろう。
そんな珍しい名前があるのならさすがの僕も覚えがあるはずなのだ。

「親が見たいだなんて、式はいつにする?」
「なんの式だよ!」
「告別式。しかも今日」
「軽い答えが返ってくるとおもったら、重っ! つか両親関係ないよっ!」

ようやく住宅地を抜け、また左へと折れる。
またしても金網に遮られた線路が見えた。
次の駅まであと少しということになる。

「で、そのマナさんはバス通?」
「うん、タップすることで、バス召喚できる」
「お前は土地カードかっ!」
「ううん、レジェンド。しかもアンコモン」
「微妙すぎる!」
「ちなみに召喚とは呼び出すことで、召還は呼び返すことなんだって」
「今すぐお前を召還したい」

というわけで、件のマナさんはバス通ということが判明した。

「それはもう、24時間フリーパスなのです」
「うん、バスは24時間走ってないと思うんだな」

どれだけ気前いいんだよバス会社。
それにこんな住宅街を深夜もバスが走ってたら騒音問題になりかねん。
というか、バス会社赤字覚悟だろ。

マナさんはまっすぐに伸びた髪を左右にフルフルと振りながら一回点。
ショートカットなので、髪は小さく円を描くだけで留まった。

「で、マナマナさんは本当にうちのクラスにいたっけ?」

後半のマナのキーをひとつ下げる。ここ重要。

「うおお、なんかテレビにでてる双子みたいだね」
「あー、はい、そうですね」

もう突っ込むのも疲れてきた。しかも敬語。

「幽体離脱ー♪」
「そっちかよっ! 名前空気読め!」

もちろん歩いているので、地面で寝そべって立ち上がる事はしなかったが、
教室内だったらまじでしそうなので怖い。
というか、そこなのだ。
事実こんなにぎやかな女の子がクラスにいたのならば、
さすがの僕だって気がつくと思うんだけど。

「でも、勇退離脱って、潔いのか逃げてるのかわからないよね」
「そんな言葉、ないから!」

気づけばもう見えていた駅がそこにあった。
次の駅がようやく僕の目的地。
周りの景色もようやく見慣れたものになってきている。

ほっとしていた反面、こいつはどこまで着いてくるのだろうとすごく疑問に思う。
すでに彼女の降りたバスから一駅半分歩いている。
確かあのバスはこの駅の近くまでが巡回ルートなので、
彼女がここまでくる行動に矛盾ができてしまっている。

「で、マナさんは何故着いてきてるの?」
「べっ、べつに、帰る方向がたまたま一緒だっただけだからねっ!」
「それ、なんてツンデレですか?」

ぷんすかと怒るふりをするマナさん。
なんとなく、その話題を逸らそうとしていることがわかった。
僕空気読める子。
別に僕としては別段被害を被ったわけじゃないのでいいのだが。

「昔読んだ本に載ってた」
「ツンデレなんかが載ってるんですか?」
「確か、かぼちゃの馬車が」
「もう言わなくていいです。というか”ツ”と”シ”の違いくらいわかるでしょうに」
「あ、靴が片方」
「とりあえず、落ち着きましょう」

これ以上はどこかの会社から大きな権力で脅されそうだったので割愛。
しかも、お姫様ツンデレではなかったような気が。

「そういえば、和やんなんで敬語なの?」
「そういうあなたは、ニックネームが変わってますが」

どこかの幻想殺しみたいに呼ばないでほしい。
僕はそんな近未来都市の世界の住人じゃありません。

「次だっけ?」

唐突にマナさんは聞いてくる、次? あぁ駅の事か。

「○○○駅は確かに次ですが。どうかしました?」
「え? うんん、別に何でもないよ」

それは微妙な変化だったが、確かにマナさんに翳りが見えた。
いや、ただ影が重なってそう見えただけかもしれない。
そもそも学校の友人(としておこう)とこれだけ話したのは久しぶりだったのかもしれない。
特に理系に進んだ先は男たちの集団。
クラスでも女子は片手で数えれる人数しかいないのだ。

ん? クラスが変わってすぐだったから失念してたけど、
数人しか女子がいないのだったら、さすがの僕だってマナさんに気がつくはずだ。
かといって、一人も女子の名前と顔がでないのだから、
完全に僕が悪い可能性もある。

「どしたの?」

地面を見つめ、深く考えていた僕の目の前にマナさんの顔が広がる。

「え、あ、ちょっとぼーっとしてました」
「まったく、マナちゅあんの妄想でもしてたのかなっ!」

こんな道路の往来で妄想なんかした日には、
僕はこの地区周辺100キロ圏内には二度と住めないだろう。

「してません」
「うーん、残念っ!」

ぜんぜん残念そうに見えない。
むしろこの状況を楽しんでいるように思える。
ま、状況というよりも、会話を、といったほうが正しいだろう。

「でも和君だったら幽霊相手でも欲情しそうだね」
「その前に幽霊見れませんから」
「それは和君違うよ。幽霊がいるかいないかもわからないのに、
見れないって決め付けるのはおかしなことなんじゃない?」

マナさんの言っていることは至極同然の話だった。
大衆論が絶対ということは、ありえないし。
逆に言えば、それが多数決の大きな弱点になったりもする。

「和君はなんで食べ物が分解できるか知ってる?
 わからないのなら、それもまた幽霊の仕業かもしれないね」

奇跡だってそうだ。起こってしまったのならば、それは奇跡ではない。
ただそこに現実として在り続け、ただの事実として記憶へと綴られる。
きっと幽霊だって同じ事で、見えてしまえば、ただの事実。

「だけどね、奇跡なんて一瞬だけでいいの。
 ずっとあったらきっと奇跡に対する喜びなんてなくなっちゃう」
「そりゃそうですね」

宝くじだって、競馬だって、偶に当たるからこそその喜びは計り知れない。
そりゃずっと当たりつづけたって幸せだけど、
それはきっと事実になって、当たり前になって、
そこに喜びはなくなってしまうのではないだろうか。

「駅もうすぐだねー」

マナさんが目を向けた先には見慣れた駅があった。
○○○駅だ。

「そうですね、で、マナさんはどうするんです?」
「私は戻らないと」

やはりそうだったか。
バスから降りて一つ目の駅の時点でなんとなくわかっていた。
マナさんは僕の暇つぶしに一緒に話し相手として歩いてくれたのだ。
それを察したかのようにマナさんは言った。

「勘違いしないで、別に和君の為じゃないんだからね」

どこのツンデレですか?とは茶化さなかった。
僕はため息をつき、そうですかと伝えた。

「じゃあ僕も自分の為に勝手にやります」

僕は財布に入ったなけなしの150円を自販機に突っ込んだ。
それから当たり障りのないりんごジュースを買うと、それをマナさんに上げた。

「別になんのお礼でもなく、ただのプレゼントです」
「ねねっ! それ、なんのツンデレなのかなっ?」

僕は手痛い反撃を食らうのだった。
やっぱりさっき茶化しておくべきだったか。

「うん、でも、ありがと」

少しはにかむように微笑んだマナさんの顔は印象的だった。

「じゃあ、行くね」

帰るね、でも、また会おう、でもなく、
僕はその言葉を聞いて何故かひどく心が揺れた。



マナさんは荷物もなにも持っていなかった。


彼女は先ほど来た道を、また幼い子供のように走っていった。
その姿はまるで、過去に戻るような錯覚を覚えた。
僕はたくさんの荷物を持って先に進み、未来へ。
彼女はまた、荷物をどこかに置いてきたように遠い過去へ。








話は翌日に進む。
普段どおりに学校へ来た僕は、
クラスメイトにマナという人が在籍しているかどうかを聞きまわった。
結果は、そもそもマナという名前の生徒事態存在しなかった。

でも、確かに彼女はいたのだ。
証明するものはなにもなかった。
では何か? 彼女は幽霊だったとでもいうのだろうか。

僕の頭の中は彼女のことでいっぱいになった。
授業の内容は当たり前のように入っては来なかった。


だが、事態はあっけなく終焉を迎えたのだった。

勉強も手付かずだった僕は、現実逃避の中でも一番効率のよい、
部屋の掃除へと取り掛かっていた。
本棚の中で埃被った小学校時代の卒業文集を見ていたときのことだった。

その中にはつい数日前に出会ったマナさんとそっくりの写真があった。
そのままそっくり幼くした感じだった。
急いでクラス名簿を捲っていく。

「あった・・・」

そこには、”真中麻奈”とゴシック体で書かれた文字があった。

「なんだよ、苗字違うじゃないかよ」

僕は悪態をつきつつ、彼女の文集を開いた。
次出会ったときに、この文集をネタにいじることに決めた。

でも、そんな考えはすぐに後悔することになった。
僕はあまりにも愚かで、救いようのない人間だということもわかった。

文集はたった半紙しか書かれてなかった。
内容はいたって簡単なものだった。

早く病気を治して、皆とお話したい。

子供っぽい丸文字で、ただそれだけの為の文章が、
手の中で広げた文集に綴られていた。
僕のなかで何かが動いた。
いや、駆け巡ったのかもしれない。
怒りとか、悔しさとか、何か形容し難いなにかが僕の原動力になった。

僕はいすの上に投げ掛けていたコートを持って外へと飛び出した。
彼女の入院していた病院は知っていた。
何故なら僕は、その病院に彼女を見舞いに行ったことがあるからだ。

今頃思い出す自分に怒りがこみ上げる。
どうして、名前を聞いたそのときに気がつかなかったのか。

焦る手で僕は自転車のワイヤーを外して、飛び乗った。
目指す先は、市内で一番大きい総合病院。
他の客の目線も気にせず僕は彼女の病室へ向かった。
今頃になって鮮明に見舞いにいった日のことを思い出す。

彼女の病室は二階の一番奥の部屋だった。

「ほらみろ」

汗をたらしながら、僕は真中麻奈と書かれたプレートを発見した。
緊張しながらも、ドアを開いた。
リノリウムの床が窓からの光を反射させる。

「ぇ」

出たのは、とてもか細い声だった。
まるで呼吸をしているかのように、音にもならない声。





それは僕の声だった。

病室には一本のアップルジュースが花瓶の横に置いてあった。
中身は半分残ったままだった。

呆然と立ちすくむ僕の背後から足音が聞こえた。
どうやら誰かが走っている僕を見て、看護婦に言ったのだろう。







嫌な予感ほど当たるものはない。
彼女は5日前に亡くなったのそうだ。
看護婦は、彼女は結局学校にも行けずその生涯を閉じたことと、
早く病院から出て行きなさいということだけ言った。

僕は病室においてあったアップルジュースを手に取り、
そのまま病院を出た。

「はは・・・」

よほど変な笑い方をしてたのだろう。
それも下を向いて笑っていたので、他人からいぶかしむ様な目で見られていた。

次第に笑いを抑えきれなくなって、僕はその場で大笑いしたのだ。

彼女が亡くなったのは五日前。
でも僕があの日彼女にあったのは四日前だった。


ならば彼女は何者なのか。
本当に幽霊だったのか。

でもそれでもいいじゃないか。

幽霊でもエイリアンでも、なんだっていい。

確かに僕は彼女と一緒にたった数十分の未来を歩いた。
それだけが奇跡でもなんでもなく、現実に起こった事実なのだから。

彼女は確かにそこにいた。
小さな小さな夢を叶えて。

僕はアップルジュースのキャップを取ると、
天に届くように、大きく振り上げた。
半分しか入ってなかった中身は大きく弧を描き、
やがて地球の重力に引かれ地面へとしみこんだ。

僕は自転車の鍵をポケットから出し、ワイヤーロックを開錠した。
勢いをつけて踏みつけたペダル。

未来に向けて、自転車は走る。

<了>



―そして小さな物語―

私は読み終わった文庫本を、ベッドの横にある机へと置く。
本の中に書かれた登場人物は自由に会話を楽しんでいる。
それが私にとってのささやかだけど、絶望的な夢だった。
小学一年生の最初の方に学校に行ったきり、
いまや私の家はこの質素な病室になりつつあった。

ふとドアノックが鳴る。
この時間帯に両親がくるはずはない。
私はどうぞ、と声をかけるとぎこちなく扉は開いた。

野球帽を被った男の子だった。
どうやら男の子ひとりでここに来たらしい。
ただ男の子の方も病院にあまり慣れてないようで、
私は私で突然の来訪者に戸惑いを隠せないでいた。
数秒だったかもしれないけど、沈黙がやけに長く続いた。

男の子はそのまま背負ったランドセルを起用に前にずらすと、
そこからクリップで留められたプリントを取り出した。
ようやく合点がいったのだ。
この男の子はどうやらプリントを頼まれたらしい。

「先生から頼まれたんだ。家が近いからって。
 どこに置けばいい?」

物珍しげに男の子は周りを眺めていた。

「えっと、じゃあ、そこの棚にお願い」

私もおっかなびっくりしながらも声を振り絞った。
男の子は私の指差した棚にプリントを置いた。

「あ」

男の子が何かを見つけたように声を上げた。

「お前、これ読んでんだ」

男の子が指差したのはひとつのシリーズ小説だった。
物語の内容は、男の子と女の子が偶然に携帯電話で出会い、
でも女の子は謎の組織から致命傷を負ったのだった。
それでも女の子は一命を取り留めるのだけれども、
女の子は記憶を失ってしまい、男の子との思い出はもうなくなってしまうという話だった。

「俺も読んでるだけどさ、これじゃあなんか救いがないよな」

ちなみにこの本は完結していて、
男の子は記憶のなくなった女の子とまた暮らす決意をする。

「ううん、そんなことないよ。だって男の子がいるんだもの」
「そりゃいるけどさ」
「そういう意味じゃなくて。男の子は覚えているんだもの。いろいろな思い出を。
 だから、たとえ女の子が忘れたとしても、その思い出は決して消えてしまうわけじゃないと思うの」
「なる・・・ほどね」

男の子は私の言葉に対して深く考えているようだ。

「この本読んでるやつクラスにいないと思ってたからさ、結構驚いてる」
「そうなんだ。でも私はこの本好きだよ」
「そっか」

まるで会話が切れるのを狙い済ましたかのように、
看護婦が私の部屋へと入ってくる。
そういえば検査の時間だった。

「あ、わりぃ。邪魔したな」

男の子はばつの悪そうに顔をゆがめる。

「ううん、私あまり学校とかいけないからもっと喋りたかったよ」
「そっか、けど本当にそれが願いだったなら、いつかきっと願いは叶うよ」
「本当?」

返事の変わりに男の子は言った。

「和希。今日からお前は友達だ」
「私は麻奈。また遊びに来てね」
「病院に遊びに来るってのは、ちょっとおかしいな」

そう言って私たちは笑いあった。

でもその翌日。検査の結果から私は東京の大きな病院へと移された。


そして数年が経った今日。
私は余命数日という宣告を受けて地元の病院へと移された。
病室は数年前と変わらなかった。
私と男の子が好きだった小説家は新しいシリーズを書いて完結させていた。

そして最後の最後、意識が途切れようとする中、私は願った。


どうか神様。最後に男の子と一緒に夢を果たせますように――――と。




今君がいる場所は、もう私が追いつけない場所にいるでしょう。
でも少しの不安もないよ。
生きた。
ほんの数秒、数分、私はここに生きた奇跡を残したから。
だから大丈夫。
その事実だけあれば、それは永遠に生き続けるのだから。

だからおやすみ。
スポンサーサイト